― 東京家庭裁判所 後見センターレポート vol.33 から ―
成年後見制度について
「一度始めたら、もう一生やめられない」
そんなイメージを持っている方は少なくありません。
ですが、
必要がなくなれば“取り消す”ことができる制度でもあります。
今回は、
東京家庭裁判所後見センターが公表した
後見センターレポート vol.33 をもとに、
「後見・保佐・補助の取消し」について整理します。
① 判断能力が回復した場合の取消し
(後見・保佐・補助 共通)
認知症の改善や、病状の回復などにより
判断能力が回復した場合には、
申立てにより 後見・保佐・補助の開始審判は取り消されます。
ポイント
- 対象:後見・保佐・補助すべて
- 申立て:必要
- 診断書:原則必要(成年後見用診断書)
- 本人・後見人等の陳述聴取あり
- 家庭裁判所調査官による「本人調査」が行われることも
👉 「判断能力が回復したからやめる」場合の取消しです。
② 制度利用の必要がなくなった場合の取消し
(補助のみ)
今回のレポートで特に重要なのが、こちらです。
補助は「必要な部分だけ」使う制度
補助は、
- 同意権(取消権)
- 代理権
を 特定の行為に限定して付与する制度です。
そのため、
✔ その行為が終わった
✔ もう補助が必要な場面がなくなった
という場合には、
補助開始の審判を取り消すことが可能とされています。
この場合の大きな特徴
✔ 判断能力の回復は要件ではありません
✔ 診断書の提出は不要
✔ ただし
- 同意権(取消権)
- 代理権
を すべて取り消す申立てを行う必要があります。
これらがすべて取り消されると、
家庭裁判所は 補助開始の審判も取り消します。
比較すると、こんな違いがあります
| 判断能力回復による取消し | 制度利用不要による取消し | |
|---|---|---|
| 対象 | 後見・保佐・補助 | 補助のみ |
| 理由 | 判断能力が回復 | 補助の必要がなくなった |
| 診断書 | 必要 | 不要 |
| 本人調査 | あり | あり |
制度は「一生縛るもの」ではありません
後見制度、とくに補助は
「必要なところだけ関わり、役目が終わればやめられる」
柔軟な制度設計になっています。
「後見」は判断能力の回復が前提。現実は簡単ではありません
制度上は、
後見・保佐・補助はいずれも
👉 判断能力が回復すれば取消し可能
とされています。
ただし、実務の現実を見ると――
🔴 後見の場合
後見開始の要件は
「事理を弁識する能力を欠く常況」
つまり
- 重度の認知症
- 回復が見込みにくい疾患
- 高齢による恒常的な判断能力低下
が前提になっているケースがほとんどです。
そのため実際には
✔ 判断能力が「回復した」と医学的に評価されるケースは少なく
✔ 後見開始後に取り消される事例は多くありません
👉 制度上は可能でも、現実的にはハードルが高い
というのが実感です。


