■ 相続・遺言・後見は「人生の流れ」で考える
相続・遺言・後見は、バラバラの制度ではありません。
どれか一つだけ知っていればよい、準備しておけば安心、というものでもありません。
それぞれ役割があり、
人生の流れの中でつながっています。
大きく分けると、次の3つのタイミングです。
● 元気なうちに
これからのことを考え、準備しておける時期です。
誰に何を任せるのか、どのように引き継ぐのかを決めておくことができます。
そして実は、
元気なうちにしかできないことも多くあります。
ただ一方で、
- 「まだ必要ないかもしれない」
- 「今すぐじゃなくてもいいかな」
と感じてしまい、なかなか進まないことも少なくありません。
例えば身の回りの整理もそうです。
- 片付けは体力がないとできない
- でも「もったいない」と感じて手放せない
こうした気持ちはとても自然なものです。
● 判断能力が低下したとき
「もしものとき」にどうなるのかを知っておくことが大切です。
- 何も準備していないとどうなるのか
- 「やっておけばよかった」と後悔しやすいこと
- 今からでもできる備えはあるのか
こうした現実を知ることで、必要な準備が見えてきます。
ただし、すべての方が判断能力の低下を経験するわけではありません。
そのまま元気に過ごされる方もいらっしゃいます。
だからこそ、
「本当に必要なのか」と迷われる方も多いのが、この分野の特徴です。
それでも、
判断能力が低下してしまった場合には、
できることが大きく制限されてしまいます。
そのため、
👉 「万が一に備える」
👉 「保険をかけておく」
というイメージで、考えておくことが大切です。
● 亡くなった後
実際に手続きを行うのはご家族です。
- 家族はどんな手続きをすることになるのか
- 困ることは何か
- 自分はどうしてほしいのか
を考えておくことで、ご家族の負担を減らすことができます。
実際のご相談では、こんなお声をよくお聞きします。
- 「自分も手続きをしたことがあるから大丈夫」
- 「うちの子どもたちは仲がいいから揉めない」
- 「財産もそんなにないから問題ないと思う」
もちろん、その通りになるケースもあります。
ですが実際には、
- 手続きの多さに戸惑う
- 書類集めに時間がかかる
- 思っていた以上に手間がかかる
といった場面に直面することも少なくありません。
また、
「揉める・揉めない」だけではなく、
👉 手続きがスムーズに進むかどうか
👉 家族の負担が軽くなるかどうか
という視点もとても大切です。
少しだけでも準備をしておくことで、
ご家族にとって大きな助けになります。
● 家族でも、なかなか言い出せない話
相続や終活の話は、
本当は大切だと分かっていても、なかなか切り出しにくいものです。
特にお子さんの立場からは、
- 「こんな話をしたら失礼かもしれない」
- 「早く死ねと言っているように思われないか」
- 「親を不安にさせてしまうのではないか」
と感じてしまい、言い出せないというお声をよく聞きます。
一方で、
👉 気にはなっている
👉 いつかは考えないといけないと思っている
という方も多くいらっしゃいます。
だからこそ、
どちらか一方が抱え込むのではなく、
少しずつでも話せるきっかけを作ることが大切です。
■ 元気なうちに行うことは?
元気なうちは、これからのことを自分で決められる大切な時期です。
このタイミングでの準備が、将来の安心につながります。
■ 判断能力の低下について知っておくこと
認知症は、誰にとっても無関係なものではありません。
現在は、
👉 65歳以上の約5人に1人が認知症になるともいわれており、
年齢が上がるにつれてその割合は高くなっていきます。
また、最近では
👉 **MCI(軽度認知障害)**という言葉も聞かれるようになりました。
これは、
認知症の一歩手前の状態とされており、
早めに気づき、適切に対応することで
- 認知症への進行を遅らせる
- 進行を防ぐ可能性がある
といわれています。
■ フレイルについても知っておく
認知症とあわせて知っておきたいのが、
👉 フレイルという考え方です。
フレイルとは、
👉 加齢により心身の機能が低下し、
👉 健康な状態と要介護の中間にある状態
を指します。
例えば、
- 以前より疲れやすくなった
- 外出の機会が減った
- 人と話す機会が減った
- 食事量が減ってきた
といった変化が見られる場合は、
フレイルのサインといわれています。
■ フレイルは「戻れる状態」
フレイルの大きな特徴は、
👉 早めに気づき、対策をすれば改善が期待できることです
- 適度な運動
- バランスの良い食事
- 人との交流
こうした日々の積み重ねが、
健康な状態を保つことにつながります。
■ 予防や気づきも大切
制度の備えだけでなく、
- 日々の生活習慣
- 人との関わり
- 適度な運動や刺激
なども、認知症予防の観点では大切とされています。
■ ポイント
認知症については、
👉 「なってから考える」のではなく
👉 「なるかもしれない前提で知っておく」こと
が大切です。
そのうえで、
👉 制度の備え(任意後見など)と
👉 日常の予防・気づき
両方を意識しておくことが、安心につながります。
● 財産の整理をしておく
まずは、自分の財産を把握することから始めます。
どこに何があるのかを整理しておくことで、ご家族の負担を減らすことができます。
● 預貯金
- 使っていない口座は解約しておく
- どこの金融機関に口座があるか一覧にしておく
👉 「口座が見つからない」というケースも少なくありません
● 不動産
- 名義の確認
- 共有になっている場合の状況
- 固定資産税や維持費の確認
また、
- 将来売却してもよいのか
- 誰かに引き継いでほしいのか
といった考えも整理しておくと安心です。
● 保険
- 契約内容の確認
- 受取人が誰になっているか
保険は、
- 契約者
- 被保険者
- 受取人
の組み合わせによって、税金の扱いが変わることがあります。
👉 相続対策として活用する場合は、税理士など専門家の意見も参考になります
● 借入金(負債)
- 借入の有無
- 返済状況
借入金も相続の対象となるため、
ご家族に伝えておくことが大切です。
● デジタル関係(見落としがち)
- スマートフォンのパスワード
- ネット銀行・証券口座
- サブスクや各種アカウント
👉 いわゆる「デジタル遺産」も重要になっていますおくことで、
ご家族の負担を減らすことができます。
● 家族と話し合っておく
■ 家族と話し合っておく
意外とできていないのが、「気持ちを伝えること」です。
- 誰に何を引き継ぎたいか
- どうしてほしいか
- 困ったときは誰に頼るか
少しでも共有しておくことで、後のトラブルを防ぐことにつながります。
ただ実際には、
- 子どもが複数いると、どちらにもいい顔をしてしまう
- はっきり決めずに、その場をやり過ごしてしまう
というケースも少なくありません。
ですが、こうした状態のままだと、
👉 受け取る側の認識にズレが生じ
👉 混乱や争いのきっかけになることもあります
だからこそ、
- 家族が集まったときに少し話してみる
- 自分の考えをできるだけ明確にしておく
ことが大切です。
すべてを一度に決める必要はありませんが、
「伝えておく」ということ自体が、大きな意味を持ちます。
「こうした気持ちを形に残す方法の一つが、遺言です。」
● 遺言を作成する
遺言は、亡くなった後のトラブルを防ぐための大切な準備です。
- 相続人同士の話し合いを省略できる
- 手続きがスムーズになる
- 自分の意思を残すことができる
特に、
- 不動産がある場合
- 家族関係に不安がある場合
- 子どもがいないご夫婦
などは、早めの作成がおすすめです。
■ 遺言の種類と基本
遺言にはいくつか種類がありますが、
よく使われるのは次の2つです。
● 自筆証書遺言
自分で書いて作成する遺言です。
メリット
- 費用がかからない
- 手軽に作成できる
注意点
- 書き方に不備があると無効になることがある
- 紛失や改ざんのリスクがある
👉 法務局での保管制度を利用する方法もあります
● 公正証書遺言
公証役場で、公証人と一緒に作成する遺言です。
メリット
- 形式不備の心配がない
- 原本が保管されるため安心
- 相続開始後、すぐに手続きに使える(検認不要)
デメリット
- 費用がかかる
- 作成に手続きが必要
■ どちらを選べばいい?
手軽さで選ぶなら「自筆証書遺言」
確実性で選ぶなら「公正証書遺言」
👉 迷った場合は、公正証書遺言が安心ですや家族関係に不安がある場合は、
早めの作成がおすすめです。
● 任意後見などの備えを検討する
■ 任意後見などの備えを検討する
将来、判断能力が低下したときに備える方法もあります。
- 任意後見契約
- 財産管理委任契約
- 見守り契約 など
これらは、
👉 「もしも」のときに備えて
👉 誰に何を任せるかをあらかじめ決めておくものです
■ 任意後見のポイント
任意後見契約は、元気なうちに契約しておき、
判断能力が低下したときに効力が発生する仕組みです。
● なぜ事前の準備が大切なのか
何も準備していない場合、
判断能力が低下した後は、
👉 家庭裁判所に申立てを行い
👉 法定後見制度を利用することになります
その場合、
- 誰が後見人になるかは選べないことがある
- 専門職が選ばれるケースもある
- 柔軟な対応が難しいこともある
もちろん法定後見制度も大切な仕組みですが、
👉 「自分で決めておきたい」
👉 「信頼できる人に任せたい」
という方には、任意後見という選択肢があります。
● エンディングノートを活用する
必須ではありませんが、気軽に始められる方法です。
- 連絡先
- 医療や介護の希望
- 財産のメモ
などを書いておくことで、ご家族の助けになります。
エンディングノートは、
遺言書のような法的な効力はありませんが、
👉 気持ちや情報を自由に残せるものです
例えば、
- どんな思い出を大切にしているか
- 大切にしているもの
- 葬儀やお墓の希望
- 介護の希望
など、遺言書には書かないような内容も残すことができます。
また、
もし認知症などで判断能力が低下した場合には、
- これまでの趣味
- 好きなこと・嫌いなこと
- これまでの生活や経歴
といった情報があることで、
周囲の方とのコミュニケーションにも役立つことがあります。を書いておくことで、ご家族の助けになります。
■ 判断能力が低下したとき、どうなるのか
認知症などにより判断能力が低下すると、
これまで当たり前にできていたことができなくなります。
そして、何も準備していない場合、次のようなことが起こる可能性があります。
● 銀行口座が使えなくなる
金融機関は、本人の判断能力に不安があると判断すると、
口座の取引を制限することがあります。
- 生活費の引き出しができない
- 施設費用の支払いができない
といったケースもあります。
● 不動産の売却ができない
自宅を売却して施設費用にあてたい場合でも、
本人の意思確認ができないと手続きが進められません。
👉 家族でも代わりに判断することはできません
● 契約や手続きができなくなる
- 介護施設の契約
- 各種名義変更
- 解約手続き
なども、本人の判断能力が必要になります。
■ 判断能力が低下したときに使う制度は
判断能力が低下してからできることは限られますが、
状況によっては対応できる場合もあります。
● 法定後見制度の利用
家庭裁判所へ申立てを行い、
後見人を選任してもらう制度です。
👉 本人の財産管理や契約をサポートしてもらえます
● ただし注意点もあります
- 誰が後見人になるかは選べない
- 継続的な報酬が発生する
- 柔軟な対応が難しいこともある
■ 亡くなった後、家族はどんな手続きをするのか
亡くなった後、実際に手続きを行うのはご家族です。
そして、思っている以上にやることが多く、時間もかかります。
● まず行う手続き
- 死亡届の提出
- 葬儀の手配
- 健康保険・年金の手続き
短期間のうちに、さまざまな手続きが必要になります。
● 相続人を確定する
誰が相続人なのかを確定するために、
戸籍を収集していきます。
現在は、最寄りの役場で
戸籍を一括して取り寄せることができる制度もあります。
ただし、
- 取得できるのは直系の親族の戸籍が中心
- 兄弟姉妹の相続人となる場合は、本籍地での取得が必要になることもある
など、すべてが一度でそろうとは限りません。
また、
- 役所が混雑している
- 戸籍の枚数が多い
といった場合には、
👉 その日のうちに受け取れず
👉 後日、平日に再度取りに行く必要がある
こともあります。
● 財産を調べる
- 預貯金
- 不動産
- 保険
- 借入金
など、すべての財産を把握する必要があります。
👉 何も教えてもらっていない、整理されていない場合は、
- どこの銀行に口座があるのか分からない
- 保険に入っているか分からない
- 借入があるのかどうかも不明
といった状態から探していくことになります。
その結果、
- 通帳や書類を探す
- 郵便物や引き落とし履歴を確認する
- 各金融機関に問い合わせる
など、時間と手間がかかる作業が続きます。
また、
👉 思いがけない財産や借入が見つかることもあり
👉 手続きが複雑になるケースもあります
● 遺産分割の話し合い
遺言がない場合、
相続人全員で話し合い(遺産分割協議)を行います。
- 全員の同意が必要
- 一人でも反対すると進まない
👉 ここでトラブルになることも少なくありません
■ 揉めやすいケース
実際によくあるのは、次のようなケースです。
● 不動産がある場合
- 「売って分けたい人」と「住み続けたい人」で意見が分かれる
- 評価額の考え方で揉める
● 兄弟姉妹での相続
- もともと関係が疎遠
- 配偶者(義理の家族)が関わって意見が分かれる
● 介護の負担が偏っていた場合
- 「自分が世話をしてきた」という思い
- 「平等に分けるべき」という意見
👉 感情の問題が入りやすいポイントです
● 生前の話と違うと感じる場合
- 「あの時こう言っていたのに」
- 「自分が多くもらえると思っていた」
👉 はっきり形に残っていないことが原因になることもあります
■ ポイント
相続は、
👉 財産の問題であると同時に
👉 気持ちの問題でもあります
そのため、
👉 「揉める人がいるから」ではなく
👉 「誰でも揉める可能性があるもの」として
考えておくことが大切です。
● 名義変更などの手続き
相続手続きでは、内容に応じてさまざまな専門家が関わります。
● 税理士
相続税がかかる場合は、税理士が関わります。
- 相続税の申告
- 節税のアドバイス
👉 財産が多い場合や不動産がある場合は検討が必要です
● 弁護士
相続人同士で意見が対立している場合など、
揉める可能性があるときは弁護士が対応します。
- 遺産分割の交渉
- 調停・裁判対応
● 司法書士
不動産の名義変更(相続登記)は司法書士が専門です。
● 行政書士
行政書士は、相続手続きの書類作成などをサポートします。
- 遺産分割協議書の作成
- 各種手続きのサポート
- 車の名義変更
- 農地に関する届出
● 銀行などの金融機関
預貯金の解約や名義変更は、各金融機関で手続きを行います。行政書士や司法書士に依頼可能です。
■ ポイント
相続は一人の専門家だけで完結するものではなく、
内容に応じて連携して進めていくことが大切です。。
■ まとめ
相続・遺言・後見は、それぞれ別の制度ですが、
すべて人生の流れの中でつながっています。
- 元気なうちにできること
- 判断能力が低下したときに備えること
- 亡くなった後にご家族が行う手続きへの備え
それぞれの場面で、どうなるのか、
できること・考えておくこと・知っておくことが大切です。



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